憎悪と、懺悔と、恋慕。
 
 そんな中、

 「イヤイヤイヤイヤ。 『お父さんの嫌がる事は』って、オレはどうでもいいのかよ。 オレだって、姉ちゃんがお母さんの不倫相手の息子と付き合いだしたら、複雑な心境になるかもじゃん。 グレちゃうかもじゃん、思春期だし。 ホント、よりによって何で1番面倒くさいトコに行っちゃうかなー」

 早川さんの弟さんが『晩ゴハンまだー??』と言いながらリビングに入って来た。

 おそらく彼は、今までの話を聞いていたのだろう。

 「まぁ、別にオレは幸い、そんなにデリケートではないのでグレませんけど。 オレもお父さんの気持ちは分かるよ。 お父さんは何も悪くない。 ただ、姉ちゃんも木崎さんも何も悪くないんだよね。 お父さんはさぁ、お母さんがやらかしてしまった事のせいで、姉ちゃんが好きな人と付き合えないのって、可哀想だと思わない?? 姉ちゃん、お母さんの代わりに良くやってくれてんじゃん。 料理は下手だし、洗濯物の畳み方は変だし、掃除しながらモノ失くしたりするけど、頑張ってんじゃん。 許してあげられない?? お父さん」

 弟さんは、早川さんをボロクソに貶しながらも、お父さんを説得してくれている様だった。
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