憎悪と、懺悔と、恋慕。
 
 なんでこんな、小学生でもやらない様な脅しを平気でするんだろう。

 呆気に取られていると、オカンが急に近くにあったハサミを手に取った。

 それを見た早川さんが、慌ててオカンに駆け寄り、ハサミをオカンの手から抜き取った。

 「帰ります!! ワタシ、帰りますから!! 本当に申し訳ありませんでした!!」

 早川さんは『ごめんなさい、ごめんなさい』と何度もオカンに頭を下げると、ぎゅうっと胸の辺りで握り締めていたハサミをオレに手渡した。

 「ワタシ、帰りますね」

 早川さんは床に置いていた鞄を拾い上げると、逃げるようにリビングを出て行った。
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