未来から来た花嫁 ~迷走する御曹司~
「変な味? 普通に美味しかったけど?」

「美味しかったのか? それはどういう意味でだ? 例えば、甘くないとかか?」

「ううん、甘かったよ。むしろ甘過ぎるくらい」

「甘いのか!?」

「うん、そう。チョコだからね、普通は甘いよね? 信之さんは苦手だろうけど」

「あ、ああ。そうだよな……」


なんだ、しょっぱくないのか。となると、あの女性が言ったのはでまかせで、未来から来たというのも嘘だったわけか。

何か気が抜けた感じだが、まあそうだよな。タイムスリップなんて、所詮あるわけないんだ。でもなあ……

だとしたら、廊下に出た瞬間に消えた事の説明が付かないわけで、うーん……


「ねえ、どういう事? まさか、小松ちゃんがチョコに変な物を入れたとか?」

「え? いや、そういうわけじゃ……」

「じゃあ、どういうわけ?」

「いや、それは……」


俺は言葉に詰まってしまった。慶次の疑問はもっともだが、本当の事を言ったとしても、どうせ夢でも見てたんだろうってバカにされるに決まっている。という事で、


「僕も味が気になっただけさ。なんせ小松のチョコは今年が初だからね」


と無難な言い訳をした、つもりだったのだが、


「それは変じゃない? “初”もなにも、信之さんは今までチョコ食べてないじゃん?」


確かに……。こいつ、意外と鋭いなあ。


「こ、今年は少しだけ食べてみよかなと思ったのさ」

「あ、そう。じゃあ食べてみれば? 甘くてダメなら残りは僕が面倒見るから」


そう言って、慶次は真っ赤な包装紙を破りだした。

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