未来から来た花嫁 ~迷走する御曹司~
それが少し変わった気がしている。このほんの数日の内に……


「おまえさ、レーサーを引退した時、何もかも失くしたんじゃないか?」

「…………」

「F1に乗るのが子どもの頃からの夢であり目標だったんだよな? それを失った瞬間、何もかもやる気がなくなったんじゃないのか? 俺の勝手な想像なんだが」


うーん、さすがは兼続だ。たぶんその通りだと思う。ただ、夢や目標を失ったと言うと悲壮な感じがするが、そんなに深刻な事ではない。少なくても俺はそう思ってない。

言ってみれば、楽しみがなくなって退屈してるだけだと思う。しかし……


「仕事の方はさて置いてもだ、女性の方はもう少しやる気出してもいいんじゃないか? 若いんだし。これから結婚する男に言うのも変だがな」

「兼続、それなんだが、このところ、ちょっと……」

「ん? 何だ? 心境の変化でもあったのか?」

「心境の変化、かあ……。ああ、確かにそういう事かもしれない」

「ほお、そうか。話してみろよ。あまり時間が無いから手短かに頼みたいが」

「わかった」


兼続に話してみよう。このところの胸のモヤモヤを。そうする事で、少しはスッキリするかもしれないから。


「家に新しい使用人が来たんだ。メイドで、名前は小松という」

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