未来から来た花嫁 ~迷走する御曹司~
小松と横に並んで屋敷内を歩いている。もちろんヒロミを捜すためだが、正直なところ、俺は“心ここに在らず”といった状態。一応はヒロミを捜す素振りはしているものの、実際は横にいる小松が気になって仕方ない。


「ご心配でしょうね?」

「え?」


小松の言葉に、俺は驚いて彼女の方を向いた。心配とは何の事だろうか。俺が今一番心配な事は、小松にいるのかどうかなのだが、まさかその事を言ってる訳ではないだろう。


「信之さまは、とても可愛がってらしたですもんね?」


おまえの事をか? それはこれからなんだけど?


「ヒロミさまの事……」

「あ、ああ、そうだね。とても心配だよ」


なんだ、ヒロミの事だったか。

うん、確かにあいつの事も心配だ。生きてくれているんだろうか……


「私、思ったんですけと、ヒロミさまは誘拐されたんじゃないでしょうか?」

「誘拐? なんで?」

「だって、ヒロミさまは毛並も素晴らしいロシアンブルーで、可愛らしいから……」

「そうは言っても、お婆ちゃんネコだぞ?」

「見た感じではそう思わないと思います。お体は小さくて、まるで子ネコのようですもの。実は私も初めはそう思ってました」

「うーん、確かに。それはあるかもしれないね?」


なるほど、誘拐ね……

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