しっとりと   愛されて
敏腕の坪井専務は長身でがっしりとした体格だった。

いつもスーツがビシッと決まり、ダンディな雰囲気で女子社員に人気だった。

「専務、コーヒーをお持ちしました。」私はいつものように午後のお茶をお出しした。

「ありがとう。君が今欲しいものは何かな?私に言いなさい、何でもいい。バッグかネックレスかヒールか、それともスーツか?」

「い、いえ、欲しいものは何もありません。」

「そんなことはないだろう?じゃ、私に何か頼みたいことはないかな?何でもいい。」

「私、専務にお願いしたいことがあります。」

「ほう、いいね。それは何かな?」

「専務はヘビースモーカーでいやっしゃいます。ですから、もう少し葉巻を減らしていただきたいのです。お体に良くありません。」

「あっはっはっは。」専務は私の言葉に大きく笑った。

そしてデスクから離れ、私のそばに来た。

私はソファへうながされたので座った。

「私にそんなことを言ってくれるのは君だけだ。やはり君は私にとって、特別な存在だ。」

専務は私と向かい合ってソファに掛けてくつろいだ。

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