淋しいお月様
ピピピピ……体温計を挟んでから、しばらく長い間があって、電子音がした。

お兄さんはそれを見て、体温計を私から引き抜いた。

「げっ。8度9分!」

彼が声をあげる。

8度9分もあったのか……どうりでダルイはずだ。

彼はまた、看護師さんのところへ行き、体温計を渡した。

「インフルエンザかもしれませんね。ちょっと空き部屋のベッドで待ってましょうか」

看護師さんはそう云うと、窓口から出てきて私の片腕を支えてくれた。

お兄さんももう片方の腕を支えてくれて、捕われた宇宙人状態で私は移動した。

隔離、か。

お兄さんにも伝染らないといいんだけど。

ああ、でもこう見えて頑丈、みたいなことを昨日云ってたな。

ぼんやりとそんなことを思い出す。



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