淋しいお月様
「あれ? もう行くの?」

「うん」

「また明日、帰ってくるのよね」

「うん、いや……」

セイゴさんは言葉尻にためらいを見せていた。

「ちょっと、全国を旅してくるよ」

「旅? 旅って……旅行?」

私の変な問いかけにも、彼はなんとなく頷いてくれた。

「そんなとこ」

急に胸が締め付けられる思いがした。

「そんな……。淋しいな」

「大丈夫だって。友だち、できたんだろ」

「うん……」

「またすぐ帰ってくるから」

「うん……」
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