恋物語。
「え、いやね…?実は井上さん…何やら大きなプロジェクトのリーダーに選出されたっぽくてさー!それ関係なのかなぁ~…って思って」
「え?そうなの…!?」
そんな話…一切してくれてなかったから…ほんとに驚いた…。
「うん!まぁ、私も詳しくは知らないんだけどねー?」
「え…?」
「それがまだ極秘らしいんだ。近々分かると思うって純也が言ってた」
「あ…そうなんだ…」
だったらなおさら…部外者の私になんか…話せない、よね…?
「で!でっ!!!何が“今は無理”なの!?ねぇっ!!」
「っっ…」
朱里の目は、まるでもう…水を得た魚のよう。ズンズンと私に詰め寄ってくる。
「い……言えない…っ」
「えぇーー!!言えないこと、お願いされたのー!?」
「そ…そうじゃない、けど…っっ」
「じゃあ何?だったら言えるでしょ!?」
「っ…」
朱里はバンッとテーブルを叩く。
何これ…取り調べ…?私、受けたことないけど…。
「えっと…その…っ」
言いながら再び俯き眼鏡に触れる。
だって朱里…怖いんだもん…っっ
「下の名前で…呼んで?って…」
「なーんだ!そんなこと?だったら呼んであげればよかったのにー!!」
今までの剣幕はどこへやら…?朱里はすっかり元に戻っていた。
「……。朱里さー…私で遊んでるよね…?」
私は恐る恐る顔をあげる。
「だって知沙の恋バナとか聞いたことないんだもん!!気になるじゃんっっ」
そう言う朱里の顔は…ウキウキとしていた。
ダメだ…朱里に隠し事なんて…絶対できない…。
そう思った休日なのだった――。