ラヴコリーダ
でも雨が降っているその間、わたしと部長は…。

たった今ささやかれた部長の言葉が頭の中に浮かんだ。

――俺のものになれ、涼香

名字じゃなくて名前、しかも呼び捨てだった。

父親以外の異性に名前を呼び捨てにされたのは、部長が初めてだ。

「水原さん、戻りますよ」

部長に言われて視線を向けると、いつもの無愛想な部長がそこにいた。

さっきのドSで意地悪な部長は、わたしの見間違いだったのだろうか?

「双子、ではないですよね?」

思わずそう聞いたわたしに、
「年の離れた姉が1人います」

部長は返した。

「戻りますよ」

部長がそう言って軒下を出たので、わたしも彼の後を追った。
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