解けない恋の魔法
突然かかった魔法
 シャワーを浴び終えたけれど、着替えの類は一切無い。
 仕方がないので素肌に備え付けのバスローブをきっちりと羽織り、バスルームから出た。

 ―― すごく無防備な格好だ。

 上着を脱ぎ、アスコットタイを外してベッドの淵にちょこんと腰掛けていた宮田さんが、私に気づくとやさしく笑って手招きした。

「さっきのインターフォン、香西さんがホテルのコンシェルジュに言って、これを届けてくれたみたい」

 そう言って宮田さんが指し示したのは、消毒薬や絆創膏や包帯の類だった。
 香西さんが私の怪我のことをそこまで心配してくれたのかと思うと、再び申し訳なくなってくる。

「こっちに座って、怪我を見せて?」

 すでに消毒薬を手に持つ宮田さんの隣に座り、素直に左腕をまくって差し出した。

「大したことありませんよ」

「なに言ってんの。けっこう痛そうだよ」

 しかめっ面をしながら私の傷をまじまじと見つめ、彼がそのまま唇を這わせる。
 思ってもいなかったその行為に、私の心臓がドキっと跳ね上がった。


< 182 / 280 >

この作品をシェア

pagetop