センセイの好きなもの
「奢るなんて言ってねーだろ!」


「いいじゃないっすか。高給取りでしょ?」


「…まぁ、お前よりは」


二人がギャーギャー言い争っている間に、そそくさと身支度を済ませる。

巧先生、ごめんなさい。行きたくないわけじゃないけど…。
ううん、やっぱり行きたくない。


「先生、お疲れさまでした!」


二人の顔もろくに見ずに急いで事務所を出る。
巧先生に捕まったら引きずられてでも連れて行かれそうだ。
私よりずっと背も高いし、男の人に力で敵うわけもない。


「おいっ、ツム!帰るなよ!」



後ろから怒ったような巧先生の大声が聞こえてきたけど、私は振り返らずに階段を一気に駆け下りた。

いつまでもこのままじゃ、何も変われないのに…一歩が出ない。
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