センセイの好きなもの
「一体何の用なの?付きまとわないで」


「紡実~、母さん借金があるのよ。今はね、ホステスやってるの。でも働くっていっても出ていくお金は多いし、生活苦しくて。紡実、お金貸してくれない?」


母は物色するように部屋を見渡している。

施設で育った私に金目のものなんてない。
専門学校に通って、生活していくだけでいっぱいいっぱい。

自分を捨てた母親に、どんな理屈でお金を貸すというのだろうか。こっちがお金を出してほしいくらいなのに。


「よくそんなこと言えるね。私のこと捨てて、散々好き勝手やったでしょ?お金なら男に出してもらえばいいじゃない!早く出てって」


母の腕を掴んで引っぱると、そのまま部屋から引きずり出した―――。


この日から母は私の職場にやって来たり、家の前で待っているようになった。
終いには私の職場でお金を貸してくれと言い出した。当然私は店にいられなくなって、学校もやめて地元を離れた。
だけどどこへ逃げても、母はハイエナのように私を探し出す。
そして、お金をせびるのだ。
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