エタニティ
陽希の頬を突くと、彼は私の指先に軽く口付ける。

「……美知佳さん、今日楽しかった?」

「……そうねぇ、久しぶりに会ったから。皆、すっかり落ち着いた大人になってた。気が付いたら30代だもんね」

楽しかったの一言では表せない、妙な気分だけど。

「美知佳さんも大人でしょ」

「フフ、どうかな。私、好きなことしかしていないし」

私の膝の上に頭を乗せた陽希は、すっかり寛いでいるワンコみたい。

なんて思った途端、腿を這う彼の長い指を感じる。

不意の刺激に体が反応して、思わず陽希の頭をペシッと叩いた。

「ハル、触り方がエロいっ」

「痛いなぁ。俺も好きなことしようと思ったのに」

ドラマの役より本物のハルの方がよっぽど危険な男だわ、と私はブツブツ文句を唱える。


もうっ、こんなことを言おうと思ってたんじゃないのに。

……落ち着け、私。

「皆と話していたら、しみじみ思っちゃった。高校生の頃の私は、今の私を想像出来なかったけれど、あの頃があったから今の私がいるんだなって」

陽希は体を起こして、私の顔をまじまじと覗き込む。

そして、意味不明とばかりに首を傾げた。

「……難しいこと言わないでよ、美知佳さん。俺、頭良くないからね」

陽希が私の手を掴み、指と指が絡まり合う。

それだけのことに幸せを感じてしまうなんて、どれだけ陽希のことを好きなんだろう。
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