素顔のキスは残業後に
付き合う前はしつこい位に重ねた言葉も、その手に入った途端に少なくなる。なんて、分かりやすい手抜き。
付き合っても欲しい気持ちは変わらないのに、言葉がなくなると不安になるのに。


「愛してる」

低い囁きが耳朶を掠めると、体の芯から満たされていくのを感じる。
優しく押し倒されたベッドの下に脱がされたばかりの黒地のフレアーワンピースとストッキングが静かに落ちると、私を見下ろす雅人の瞳が熱を持つ。

素肌を滑らす指先の感触も、何度も重ねたキスも、どの瞬間も愛おしくて大切にしたいと思っていた。

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