呉服屋の若旦那に恋しました
とりあえず1年だけ
浅葱家に来て一カ月が経ち、あっという間にGWになりました。
そういえば私、さらっと社会人になってしまったことに、GWは全て仕事だと知らされてやっと気づきました。
本当は大手企業に勤めてバリバリのキャリアウーマンになるつもりが、一体どうしてこんなことに……。
「あ、朝だ……」
社会人の朝とは、こんなに絶望的なのか……。
私は、目覚まし時計を恨めしく叩いて、むくりと起き上がった。
今日は珍しく志貴が仕事の用事で朝からいないので、荒々しく起こされることはなかったけれど。
でも、化粧台の上には、いつも通り志貴セレクトの髪飾りが置いてあった。いつの間に……。
「お腹減った……」
朝ごはんを作るために今日は少し早く起きていた。
私は肌けた浴衣姿のまま洗面台に行き、いつものように歯を磨きながら携帯をいじった。
すると、そこには新着メッセージが50件入っていた。
何事かと思い慌てて開くと、ほとんどが大学の友達とのグループLINEでのメッセージだった。
「え……」
面倒なので最後のメッセージだけ読んだが、そこには衝撃的な一文が書かれていた。
『じゃあ明日弾丸京都ツアーね! ついでにいとちんに会いに行こう!』
「待って、待って待って待って……、明日ってことは今日だよね……今日!?」