サヨナラと秘密を用意して。


タクシーに乗って、家までの道のりを告げると、
もう涙が溢れてきていた。


本当は大丈夫なんかじゃない。
本当は寂しい。
本当は一緒にいたい。
本当は行かないで欲しい。

自分でも驚く程、陸に気持ちが移っていたのだ。

感覚も感性も似ている陸。

舌が肥えているあたしを褒めてくれて、陸は

「あおになら料理の作りがいがあるよ」

って言ってくれた陸。

鼻が敏感なあたしに、すっぽんを見せてくれたのは
いいんだけど、その場でひっくり返してしまって
しばらくあたしの鼻を困らせた陸。

いろんな輪を作ってくれて、このちいさな街で遊ぶ楽しさを
教えてくれた陸。

最近のあたしの毎日は陸でいっぱいだった。


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