鬼部長の優しい手


「もういい。書類整理に戻れ
また同じようなミスを繰り返すなよ。」


「はい、すみませんでした……」



私は深くお辞儀をして
自分のデスクに戻った。



確かに、同じミスを連発して
その上ぼーっとしてた私が悪いけど、けど!

なにも二時間も怒らなくても……



「今度はなに、やらかしたの。凉穂」

「あ、黛実」



私が心のなかで、部長に悪態をついていると同僚である
笠野 黛実(かさの まゆみ)が
呆れ顔で声をかけてきた。

黛実は私と同じ新人なのに
自他共に認める、どんくさい私と違って何でもそつなく、こなせる器用な子。
故に、部長にもあまり怒られていない。


羨ましい、と同時に
恨めしい!!黛実め!


「で、次はなにやらかしたの?」

「やらかしたって言うか…そのー
ブーケ、注文し忘れてて…」


「はぁ!?ブーケを!?

で、ブーケどうしたの?」




「塚本部長が慌てて知り合いの花屋さんに注文してくれたおかげで、なんとかなった」


そう苦笑いして話す私に
黛実は、やれやれという仕草をして
さっきの塚本部長と同じように深いため息をついた。



二人してさ、なにもそんなに
ため息つかなくても!




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