鬼部長の優しい手

部長の元まで行く途中、
最近なにかと気にかけてくれる
同僚の山本 梓くんに声をかけられた。



「あちゃー、七瀬ちゃん。
久しぶりの“鬼の塚本”からの、お呼び出しだね……

ま、頑張って!」


なんて、小声で山本くんは激励の
言葉をかけてくれた。



頑張ってってめちゃくちゃ、
他人事……

まぁ、確かに他人事だけども!


そんなことを考えながら、
部長のデスクにたどり着く。



「ぶ、部長なんでしょうか。」

「今朝、結婚式について
相談してきたカップルがいるんだが」

「は、はい……?」



てっきり、怒られると身構えていた
私は部長の思いもよらないそんな
言葉にぽかんとする。



な、なに言われるのかと思ったら……
お客さんの話?

不思議に思う私に、部長は尚も
話を続ける。


「それで、だな

そのカップルの要望は、
”身内だけでひっそりと結婚式を
挙げたい”ということだった。






そのカップルの担当、
お前に任せたい。」






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