鬼部長の優しい手



いつも使っている薄いオレンジの
ボールペンがころころと床に転がった。




あー、もう!この時間がないときに、
なんで落ちるかなぁ!



少しイラつきながらも、
屈んでボールペンを拾おうとしたとき、
誰かの手と重なった。



「あ…っ」


「…ほら」



ボールペンを拾おうとしたとき、
触れたのは私の大好きな
大きく優しい、部長の手。


「あ、ありがとうございます」


「…礼はいいから、
急がないと遅れるぞ。」


「え?あ…!そうだった!


ありがとうございます、
行ってきます!」






部長にお礼を言い、
慌てて走り出した私に
部長は“行ってらっしゃい”と言ってくれた。










私の見間違いじゃなければ、
部長はその時、笑っていてくれてた
気がする。







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