鬼部長の優しい手




どうしてこうなった。



俺はただ…






ただ、なんだ?


そもそも七瀬はただの部下だろ。
それ以下でも、それ以上でも
ないくせに。


なんで…





…全部、俺が悪いんだ。
身勝手な行動で七瀬を傷つけた。


大事にしたいのに…



紗耶香だってそうだ。
俺が風邪をひかなければ、
あいつは今頃…



七瀬だって泣かずにすんだのに。






「はあ…。」



「部長、今日それ何回目っすか」





俺がまた溜め息をついたとき、
呆れたように、少し心配した顔で、
山本がそう言ってきた。







「…悪い。なにか用だったか?」



「まあ、心配で声かけたっていうのも
あるんですけど、

これに印鑑もらいたくて」





そう言って山本は
山積みになった書類の束を俺の
デスクに置いてきた。





…部下に心配されるまで、
追い詰められてたのか、俺。



本当、情けない…
俺ってこんなに女々しかったか?






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