極上な恋のその先を。
俺のハチ公は。


「はあっ!はあっ!」



何度も転がりそうになりながら、あたしはようやく立ち止まった。

両ひざに手をついて、なんとか息を整えた。


大きく息を吸い込んで、鞄をグイッと肩にかける。
顔を上げれば、立ち並ぶビルの明りがキラキラと降り注いでくるようだった。


いつのまにか空にはキレイな三日月。

眠らないオフィス街の中でも、その存在をしっかりとあたしに知らしめているようだった。




31階。

きっとあそこにセンパイはいる。


あたしは社員証と取り出して、休日用の小さなドアからビルに入った。





カツン カツン

仕事をしてる人がいると言っても、今日は日曜日。
ずいぶんとひっそりしたものだ。


やたらとヒールの音が響いて、なんだか心もとない。


エレベーターで31階に向かうと、あたしは息をひそめて薄暗いオフィスの覗き込んだ。




「……」









大きなガラス張りの窓。
そこから見えるのは、いつもより遠慮がちに光を放つビルの群れ。

そして……自分のデスクの光だけで、資料を見つめているセンパイの後姿があった。









< 63 / 82 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop