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「僕はこれまで将棋ばっかりだったかも」

「そうなの?」

将棋ばっかりって、どんな感じなのかな。

確かに、子どもの頃の和馬はずっと将棋ばっかりだったかも。

そのまま将棋だけして大人になっちゃったって意味?

それってどうなんだろう。

でも、私にはそんなに打ち込めるもの、なかったな。

ある意味、羨ましいかも。

「和馬、子どもの頃、大会みたいなものに行ってたよね?」

「うん。憶えててくれたんだ」

「もちろん、憶えてるよ」

「いろんな大会があったよ。まあ、よくわからないと思うけど、全国規模の大会とかもね」

「へえ?その辺は、なんとなくしか知らなかったかも」

「だろうね」

子どもの頃、和馬は積極的に将棋の話をしなかった。

将棋ってなんだか地味だし、特殊な世界っぽいから、私にはどんなものなのか、全然わからなかった。

それにしても、全国規模の大会に出ていたなんて、知らなかった。

ふと、テニスの全国大会に出るクラスの男の子が、みんなからちやほやされていたことを思い出した。
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