幸せの花が咲く町で




「ただいま~!」

「お帰り。
遅いから心配したよ。」



今日は遅くなるとは聞いてたけど、なっちゃんが帰って来たのは予想以上に遅くて、0時を少し回った頃だった。
なっちゃんがこんなに遅く帰るのは初めてのことだ。



「ごめんごめん。」

「あんまり遅い時は言って。
迎えに行くから……」

「大丈夫だって。
車で帰って来たから。」

「……なにか食べる?
お腹すいてない?」

「う~ん……何か冷たいものある?
ゼリーとかプリンとか……」

こういうものはなっちゃんがたまに食べるから、一応いつでも買ってある。



「はい、どうぞ。」

僕は、なっちゃんの前にマンゴープリンとスプーンを差し出した。



「ありがとさん!
……優一……何か話でもあるの?」

やっぱり、なっちゃんは鋭い。
いつだって、僕の気持ちはお見通しだ。



「う…ん、実はちょっと今日買い物に行って来てね……」

「買い物……?
あ、花台??」

「うん、それでね…その値段が、ちょっと…ね……」

僕はおずおずと家具のレシートをなっちゃんの前に差し出した。



「うぉっ!ずいぶん張り込んだんだね。
……って、和茶箪笥って……」

「買うつもりはなかったんだけど、見たらすっごく欲しくなっちゃってね。」

「どんなの買ったの?」

「まだ来てない。
明後日来るんだ。
……ごめんね、こんな高いもの、相談もせずに買っちゃって……」

「大丈夫だよ。
来月からしばらくはお茶漬け生活になるけど……」

「えっ!?」



僕が驚くと、なっちゃんは大きな口を開けて笑った。



「冗談に決まってるでしょ!
大丈夫、大丈夫!
良いのがあって良かったじゃん。」

「うん…実はね…今日、桃田まで行ったんだ。」

「桃田!?……大丈夫だったの?」

「うん、篠宮さんに付き合ってもらったし、タクシーで行ったから……」

「そっか!それは良かった!」

なっちゃんはにっこり笑って、何度も頷いた。
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