愛してもいいですか



「……ふぅ、」

「お疲れ様でした、架代さん」

「本当にね。でも今日の話からやることも一気に増えたことだし、忙しくなるわよ」



日向と二人残った会議室で安堵の息をこぼす私に、日向は机の上を片付けながら笑う。



「有意義な会議になりましたか?」

「えぇ。あんたがバカにしてくれたおかげでね」

「あはは、バカにだなんてとんでもない!変な顔して可愛いって言いたかったんですよ」



悪気がないのか、悪いと思っていないのか。いずれにせよへらへらとした笑顔を見せる日向に、私はキッと睨んだ。



「ったく、どこの世界に社長を笑いものにする秘書がいるのよ。ありえない」

「はいはい、失礼しました」



本当、ありえない。会議中に大声で笑うし、私のことをバカにするし。優秀な秘書だなんて、程遠い。

……けど、まぁ。



「……でも、会議が進んだのは日向のおかげだから、そこはちゃんと評価してあげる」



私には出来ないこと、思いつかないことを平気でしてみせる。そこはまぁ、出来た秘書だと思うから。

照れからぼそ、と呟くと、その顔は嬉しそうにふっと笑う。



「評価いただけ光栄です。架代さん」

「……ふん」



『架代さん』呼びくらいは、許してあげる。言葉に出してはあげないけれど、心の中で呟く。

そんな声すらも聞こえているかのように、その顔には微笑みが浮かべられていた。





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