私は彼に愛されているらしい
そう言われ何故か強く反応して俺は体を起こし顔を上げる。やはり感じた通り、清水さんがすぐ傍に立って様子を窺っていた。

「片桐さんからのお土産。九州にご旅行にされたらしいの、1つどうぞ。」

「あ、ありがとうございます。」

差し出された白い包みの饅頭を受け取ってじっくり見つめる。

饅頭か、俺はあんまりこういう類が好きじゃないんだよな。でも先輩の土産だし有難く頂かないといけない。たまに嫌いだからと断る奴もいるけど俺はそういうことは出来ないタイプだ。

粒あん、だろうな。ここで食べてお礼を言いにいかないと。

「大丈夫よ。それ、こしあんだから。あとオマケね。」

俺の考えが読めたのか清水さんは優しく微笑んでさらにオマケと塩っ気のある煎餅を渡してくれた。これは俺の好物だ。状況が飲み込めず表情で訴えると清水さんは微笑む。

「前に粒あん苦手って言ってたでしょ?甘いものも少し苦手だって。」

声を落として誰にも聞かれないように配慮してくれた俺の弱点。お口直しにでもどうぞ、そう柔らかく告げると清水さんは次の人に饅頭を配りに行った。

正直驚いた。

俺、粒あんが苦手なんて話したっけか。全然覚えてない。

だいたい清水さんと俺なんてグループが違うしそんなに会話もしてない筈なのに覚えていたなんて。

「…これか。小悪魔!」

ヤバイ、すっげー嬉しかった。ちょっと…いや、かなりテンション上がる。勘違いしそうにもなるぞ。

俺はまたさっきみたいに額を机に打ちつけて唸り声を上げた。これは仕事に対してじゃない、俺の気持ちに対してだ。

「俺…ぜってー落ちた。」

弱ってるところにくる優しさとか、さりげない気遣いだとか、周りや仕事に対する姿勢だとか、感情の波がなく気分で人と接しないところとか。

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