私は彼に愛されているらしい
清水さんは俺を意識した。つまり、ここからは俺のターンだ。

「これで近付いたらどうなるでしょう。」

「ち、近い!近い近い!」

ヤバイ、凄く楽しい。思った通り一度意識してしまった相手にはめっきり弱くなってしまうんだ。

成程ね。つまり清水さんは本当に男性経験が少ないのかもしれない。それを知らずに適当に天然小悪魔であしらわれた男連中が勝手に男慣れしていると触れ回っているのだ。

俺もその一員だった。

そんな若手を笑う中堅親父どものあの顔、あの表情。成程、合点がいった。

つまりすっかり落ち着いたおっさん連中は清水さんがこういう人だと知ってたってことだ。それでもって可愛がっていた。

振り回される若手を見ながら、青いだなんだと笑っていたのだ。畜生。

「俺、清水さんのことが好きなんですよ。」

見てろよ。

「…振り回された分、ちゃんとお返ししますからね。」

トドメだ。

俺はここぞとばかりに狙いを決めて、触れるだけの軽いキスを清水さんに仕掛けた。

放心状態の清水さんを見て口角が上がる。

よし。

俺の勝ちだ。


言い訳はしない。俺はずっと清水さんが欲しかった。

腹が立ってもどれだけ振り回されても向かう気持ちは同じでシンプルだ。

悪いな、彼女は俺が貰う。


やっぱり俺は彼女を愛しているらしい。


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