秘密が始まっちゃいました。

「ともかく、今度、日冴もよーく見てみなよ。あんた、接触の機会多いんだし」


「荒神さんがなんにもやらかさなけりゃ、接触の機会なんてないわよ」


「じゃ、明日か明後日にはまた会えるよ。その時、よーく手ぇ見てみな。ヤバエロだから」


ヤバエロな手より、
私にはこの前の珍事の方が気にかかる。


夜のオフィスでたったひとり泣いていた荒神さん。

キャラが違いすぎて、正直今じゃ夢か幻かくらいに思ってるけど……。

私はそっちの理由の方が気になる。


荒神さんはなんで泣いていたんだろう。

ひとりぼっちで苦しげに泣く彼の横顔が、瞼の裏に張り付いて消えない。


私は三杯目のビールを頼もうか悩んで、やめた。


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