不器用なシンデレラ
「目、スッゴく腫れてる。お前、泣きすぎ」

 少しからかうような、それでいて優しい口調で言われまた涙がポロポロと零れる。

 こんな風に彼がまた話してくれるなんて、1時間前には思っても見なかった。

 もう2度と私の事は見てくれないと思ってた。

「泣き虫、花音」

 呆れたというより、慈しむような眼で私をしばらく見つめると、理人くんは私の肩をそっと抱き寄せた。

「お前、また俺のスーツ駄目にするなよ」

 クスクス笑いながらも、理人くんは私が落ち着くまで嫌な顔もせずずっと肩を抱いていてくれた。

 とても穏やかで優しい時間だった。

 この時間がずっと続けばいいのに。

 ちょっと欲張りな私はそう願わずにはいられなかった。
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