Fake love(1)~社長とヒミツの結婚契約書~
「…紗月…俺のコトを怜と呼ぶんだ」


「…怜…」



私は気恥ずかしさから、小さな虫の羽音程度の声しか出なかった。



「恥ずかしいのか?」


彼は私の耳許で囁く。鼓膜を擽る甘い声が私の心臓を加速させる。



「怜」



「まだまだ…小さいな声だな…もういい…俺も忙しい…そろそろ会議の時間だ…瀬川を呼び戻して、君を俺のマンションに案内させよう」


「マ、マンション!?」



「…契約書は今日から執行だ。戸籍上の夫婦ではないが…俺達の間では既に結婚は成立している」






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