嫌われ者に恋をしました

 隼人の誘いを断った時、締め付けられるように胸が痛んで、雪菜は初めて気がついた。

 課長のことを好きになっていたのかもしれない。

 瀬川さんを好きになって懲りていたはずなのに。

 まさか、休みに会いたいと言われるなんて、思いもしなかった。そんな風に言ってもらえて嬉しいと思ってしまった。

 隼人に嘘をつくなと言われて、雪菜は隼人を傷つけてしまったことを実感した。もう、自分に近づこうとは思わないだろう。そう思うと、また胸が痛くなった。

 でも、今ならまだ引き返せる。私に関わってはいけない。きっと迷惑をかけてしまう。

 家に帰って玄関の扉を閉めたら、堪えていた涙が堰を切ったようにあふれてきて、嗚咽が止まらなくなった。

 そのまま玄関にしゃがみこんで、大きな声を出して号泣した。

 雪菜は想像以上に隼人に惹かれていたことに驚いていた。いつの間にか、こんなにも好きになっていたなんて。

 もっとあの笑顔を見たい。もっとお話ししたい。そばにいたい。

 こんな想いを持っているなんて、知りたくなかった。

 こんなの、全然引き返せそうにない。でも、誘いを断らなかったら、もっと引き返せなくなる。

 これで良かったんだ。これ以外の選択肢はなかったんだ。

 そう思っても辛くてたまらなかった。

 こんなの、もう立ち直れない。
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