現代のシンデレラになる方法


それから先生と色々質問し合った。
いつもはまともに話せなかったけど、今日はいっぱい聞きたいことが聞けて良かった。

大好きな先生のことを、また少し知ることができた。



「先生、今日は色々とありがとうございました。すごく楽しかったです」

「いや、楽しんでもらえたなら良かった」


ホテル前のロータリー。
帰り際、改めて先生にお礼を言う。


「今日かかった費用は必ず払います。ぶ、分割になっちゃいますけど……」

「何言ってんだよ、やめてくれ」

「いや、でも、こんな高価なもの……」

「その分、相澤に弁当作ってもらってるだろ」


毎日のお弁当代は確かにかかるけど、今日の私にかかった出費に比べたら、全然可愛いもの。

それにお弁当代にいくらかかろうと、私が好きでやってることなんだから関係ない。
だから先生が気負う必要なんて全くないのに。

やっぱり気を遣わせてしまった。


「しかも毎日作ってんのに、相澤一切手抜きしねぇし」

「て、手抜きなんてできません……っ、先生の体の中に入るものですからっ」


慌てて言う私に、先生は声を出して笑った。
でもその表情はやがて、どこか悲しそうなものに変わってしまう


「そこまで尽くしてくれてるのに、俺のせいで痴漢にあわせて泣かせた。あれ、結構気にしてんだからな」

「す、すいません。そんなの気にしないで下さい」

「気にするっての。だから、日頃の弁当のお礼と電車のお詫びを込めてプレゼントしたかったんだ。相澤に少しでも自信を持って欲しいっていうのもあったけど」


……嬉しい。

どうして、こんなに私なんかに気にかけてくれるんだろう。

どうして、こんなに優しくしてくれるんだろう。

どんどん好きになっちゃうよ……。



だけど、もう夢からさめる時間だ。


「先生。今日は、一生に一度しかない素敵な日になりました。本当にありがとうございました」

「そんな大げさな」

「だって、きっともう二度とこんなことないですもん」

「そんなこと言うな。俺で良かったらまたデートしよう」


デ、デート!?
その単語に思わずドキっとする。


「まぁ、彼女できるまでだけどな」


舞い上がったと思ったら、この言葉で急降下。


……分かってます。
先生に彼女なんてできたら、潔く先生の前から姿を消します。



だけど、神様もう少しだけ。

もう少しだけ時間を下さい。


まだ、先生のそばにいたいんです……。



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