現代のシンデレラになる方法



夜9時をまわった頃、とある科の師長に引き止められた。

「ちょっと、どうして、うちの科ばかり新患押し付けられるのよ!」

それは事務長が無理矢理入れた患者さんだった。
事務長に言えないものだからこうやって私に苦情がくることが多い。

「す、すいません」

「なんでも引き受けてる訳じゃないんだけど!」

「はい、すいません」

いつものように師長に頭を下げる。
それからも頭上から罵声が降ってくる。

「ねぇ、あなたすいませんしか言えないの?自分は悪くないのにとでも思ってるの?」

「い、いや、そ、そんな……っ」

「いつも事務長の言いなりで、少しは自分の意見とか言えないの!?見ててイライラすんのよ!」

「……す、すい、ません……」



どうしよう、これはちょっときついかも。

だめだ、泣くな、泣くな。

何を言われても絶対に泣かないようにって、今までだって寸前のところでも踏ん張ってきたんだ。

だめだ、こんなところで泣いちゃ。

まだ仕事が残ってるんだから。
明日退院予定の患者さんと、予約患者の数を確認して。

あと1Fの休憩室の物品の補充をして……、

照明を落とされ人気のなくなった受付を通り、事務室へ向かう。
そこへ待ち構えていたのは、鬼の形相をした事務長だった。

「おい患者からクレーム来てるぞ、一体どんな説明したんだよ!」

「は、い、すいません」

「ふざけんな、すいませんじゃないだろ、明日謝ってこいよ!」

「す、いません」

「仕事は遅いし、とろいし、クレームは来るわで、ろくに仕事任せられねぇよっ」

「すいません……っ」

必死に我慢していた涙が溢れてきて、トイレへ向かう。
今月何回頭を下げただろう、何回すいませんと言っただろう。

ごめんなさい、本当にごめんなさい。

私なんかには荷が重いんです。

皆を苛立たせるばかりで、私なんかいない方がずっといいんです。

……ここから消えてなくなりたい。





< 7 / 196 >

この作品をシェア

pagetop