キスはワインセラーに隠れて
5.……バレた!?


高速道路を降りて、しばらく田舎道のような場所を走った先に、目的のワイナリーはあった。

緑に囲まれた建物は白い石造りで、なんだか可愛らしい。

オーナーや藤原さんのあとにつづいてキョロキョロしながらその中に入ると、ここでワインを作っている生産者の小川さんという五十代くらいの男性が私たちを迎えてくれた。



「わぁ……」



はじめに案内されたのは、ワインを発酵させている薄暗い部屋。

どことなくお店のワインセラーを思い出すその部屋には、瓶ではなく樽に詰められたワインが所狭しと並ぶ。


「……ワインって、なんで樽に入れるんだろ」


ワイン初心者の私は、たまたま隣にいた本田に聞いてみる。


「さあなぁ……藤原さんに聞いてみりゃわかるんじゃね?」


本田が顎で示した先には、どこから持ってきたのかいつの間にワイングラスを手にした藤原さんの姿。

彼がそのグラスを小川さんに渡すと、小川さんはなんと樽から直接そこにワインを注いだ。


「あんなことできるんだ……普通に飲むよりなんか美味そう」

「環も飲ませてもらえばいいじゃん」

「で、でも俺味とかわかんないし……本田も一緒に」

「俺は無理。ほら、オーナーもテイスティングしてるだろ? この後運転代わる約束なんだ。つか、そのための要員だしね」


なるほど……本田の来た理由に納得。

視線の先ではオーナーと、それから須賀さんもテイスティングを始めていた。

ああ、やっぱりなんだか美味しそう……


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