ルージュのキスは恋の始まり
 私達は今、化粧品会社アンジュの研究開発ラボにいる。

 私が今作っているのは、来年発売予定の口紅。

 ビーカーの中で試作品を作っては、実際に自分達の唇や腕につけて発色や潤いを確認している。

 原料の配合を変えたりして、何度も何度も試行錯誤を繰り返すのだ。

「たぶん亜紀ちゃんの唇も、これを使うと荒れないんじゃないかな?」

「何言ってるんですか?美優先輩が試さなくてどうするんですか?そんなキレイな顔してるのに。だから私が塗ってあげますね。先輩、絶対自分じゃやらないから」 

 亜紀ちゃんが私の手から試作品の入った容器を奪い、私の唇に塗る。

「ち、ちょっと、亜紀ちゃん!」

「は~い、先輩口閉じて」

「・・・・」

 せっかく出来た試作品を駄目にしたくなかったので、貝のように口を閉じる。
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