キミとの距離は1センチ

+゚:4/ 触れた指先



+゚:4




「さっくま~!!」



バッシーン!

そんな効果音が聞こえてきそうな勢いで、廊下の前方から駆けて来た人物が、わたしに見事なエルボーをくらわせてきた。

完全に油断していたところへの、その攻撃に。思わず「ごふっ」と、わたしの口から到底女子とは思えないうめき声が漏れる。



「な……菜々子さん……クリーンヒットです……」

「あっ、悪い悪いー! 昨日また夜通しDVD観てて、今日テンションおかしいんだわ!」

「またプロレスのDVDですか……」



ううう痛い……まさかこんなところで、菜々子さんに出くわすなんて……。

たった今エルボーをくらったばかりの胸元をさすりながら、わたしは先ほどの衝撃で床に落としてしまったスマホを拾う。

菜々子さんの身長だと、ちょうどわたしいい具合に技が決まるんだよね。まったく、菜々子さんのプロレス好きにも困ったものだ。

しかもたぶん、菜々子さんはわたしが長身なのをいいことに、容赦なく技をかけてきてる気がする。

そこそこ背が高いけど、わたしだって一応オンナノコなんですよ……。
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