世界でいちばん、大キライ。
ようやくコンビニが視界に入って、遠目から店内を探るように見つめるけれど、桃花らしき人影が見当たらない。

もちろん、店外にも人影などなくて、ますます鼓動が早まっていく。


残りひとつの信号を渡り終えて、麻美はコンビニの自動ドアの前に立つ。
ゆっくりと開くドアに肩を軽くぶつけるように店内に滑り込むと、瞬きもせずに手前の列から桃花を探す。

軽く肩で息をしながら、呼吸を整えるようにして店内を闊歩する。
ぐるりと一周しても、やはり桃花の姿はない。

諦めきれない麻美は、ドリンクが並ぶ通路で立ち尽くすようにしていた。

すると、後方のお手洗いからガチャリといったドアの開く音に、望みをかける。

パッと振り向いた先の扉から見えたのは、女性の黒い髪。
凝視するように麻美が視線を送り続けると、それは全くの別人だった。

「はぁ」と無意識に溜め息を吐き出し、店内の時計を見る。


時刻は10時30分。

麻美はそれから十数分粘ってみたが、桃花が現れることはなかった。
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