王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~

「ようこそ我が私邸へ、コールリッジ伯爵令嬢。昨夜は私の妹がお世話になりました」

「い、いいえ! エリナさんが家へいらしてくれて本当に……あっ、ごめんなさい、少し重いと思うんですけど……」


ウィルフレッドがウェンディの手を取り馬車から降ろし、積んであった彼女の荷物も軽々と持ち上げる。

それを代わりに受け取ろうとした侍女を下がらせ、彼女の手を引いて王子の前に立たせた。


「こちら、コールリッジ伯爵令嬢ウェンディ・コールリッジ。ウェンディ、こちらが俺の従兄弟でガーランド王家王位継承権第一位のキット王子殿下だ」


いきなり王子に紹介されたウェンディは大きく息を吸い込み、スカートの裾をつまんで慌てて膝を折る。

社交界嫌いと言えども、やはりその仕草はエリナより数段様になるもので、また、近い世界に生きるからこそ、キットの前に立たされたときの緊張の度合いも数段上だった。


「ウェンディ・コールリッジと申します。お目にかかれて光栄です、王子殿下」


ウェンディは声が裏返ってしまわないようにそう言うのが精一杯なほど緊張していたが、彼女を見守るウィルフレッドの目は穏やかなもので、キットのほうも小さく頷いて彼女の手を取った。
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