王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~

エリナの白い手が、青い薔薇の花びらを一枚摘み取った。


ドレスの隠しから取り出した透明な小瓶の蓋を開け、静かに花びらを浸す。

豊かな月光を浴びた小瓶は、はちみつの中に一枚の花びらを浮かべてキラキラと輝いている。


本邸に到着してから用意した小瓶の中には、ウェンディから譲ってもらったはちみつがいっぱいに入っていて、エリナとキットがひとつずつ持つことにした。

ラズベリーを得ることができたとして、収穫祭が行われる3日後の夜から禁断の青い果実の完成までは時間との勝負になる。

エリナは何が何でも自分がランバートから譲ってもらうしかないと思っているが、それではキットがうるさいので、ふたりで分けて持つことにしたのだ。


ウェンディに譲ってもらったはちみつが入った飴色の壺は、木箱に入れて王宮へ運んでもらうつもりだ。

おそらく、国王の使者がそれを隠し持って収穫祭に参加するだろう。


「歴史書の通りに作るとして、ブルーローズの花びらを浸したはちみつを、三晩月の光に浴びせればいいんですよね」


エリナは花びらを閉じ込めた小瓶にしっかりと蓋をして、淡い月の光をたっぷり浴びせるように掲げてみた。

キットが隣でブチッと花びらをもぎ取っている。
< 137 / 293 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop