王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~

キットが選んだのは、彼の瞳の色をそのまま写したような深い青色のドレスだった。

ベルベット生地を使ったシンプルなデザインではあるが、ビスチェのすっきりした胸元から少しだけ広がったスカートのラインが美しく、動きや光の加減に合わせて青にも紺にも紫にも見えたりするのは、まさにキットの瞳そのものだ。


エリナには気後れするほど素敵なドレスで、これを着れると思えば緊張しかもたらさない収穫祭も少し楽しみになる。


「なんか……逆にエロいだろ」


それだと言うのに、キットの要望通り青いシースルー生地を付け足して仮縫いしたものを試着してみると、彼の第一声はそれだった。

確かに青い生地の向こうにエリナの白い肌が透けて見えるのは、むしろ視線を奪われると言えなくもないし、エリナ自身もこれなら他の人と同じように肌を晒しているほうが目立たないのではないかと思う。

しかしいくら手を尽くしてもいい顔をしないキットに、仕立て屋はほとほと困り顔である。


公爵に命じられて急遽ドレスを揃えてやって来てみれば、なぜか王太子がいてあれこれと注文を付けるのだから、仕立て屋も気の毒だ。


「キリがないですから、彼のことはいいんです。これでお願いします」
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