王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~

・真実の愛のキス






幸い、13年に一度のラズベリーの収穫祭ともあって、普段より警備兵の数は格段に多かった。

暗くなった中庭で雰囲気を楽しんでいる客も多く、火事に気付いた者はすぐに人々にそれを知らせたので、3人が本館へ戻り避難を促す頃には、客の半分以上が屋敷を出ていた。


火元から舞踏ホールまでは少し距離があるので、人々は警備兵と使用人たちの誘導で、大きなパニックを起こすことなく建物を離れる。


そうして残った人々にも避難を促し、ホールの外へと誘導していると、ランバートの私兵が彼の元へ走ってきた。

畑を焼き尽くした炎は燃え広がるのがはやく、調理場にまで燃え移ったために消火活動が困難だと言う。

一旦全員、屋敷の外へ避難しようということだ。


「俺たちもはやく出よう」


主催者であるランバートと共に流れで避難の誘導に回っていたが、キットはエリナの手をキツく握り、ここも危険と判断すれば今すぐにでも走り出しそうだった。

キットの言葉に頷いたエリナは、それでも少し不安そうにホール内を見回す。


ウィルフレッドとウェンディの姿は見当たらない。

エリナたちが戻って来る前に、ホールを出ていたのだといいのだが。
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