王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~

禁断の青い果実の材料と爵位だけを持たされ、王家から追い出された3人の息子たちには、当然恨みが残った。


彼らの末裔は今でもその材料を伝え続けているが、『3つの材料を揃え、禁断の青い果実を手にする者こそ本当の王』という想いは脈々と受け継がれている。

そのためこの3つの家は不仲で、常に見えない緊張感が走り、王家は取って代わられるのを恐れているのだ。


コールリッジ家からはちみつを譲ってもらうためにいちばんいい方法は、ギデオンの言うように、婚姻関係を結ぶことである。

しかしコールリッジ家とランス家との結婚が禁忌であるのは、"禁断の青い果実"の材料のうちのひとつであるブルーローズを持っているのが、ウィルフレッドその人であるからだ。

ウィルフレッドの祖先は、元をたどれば3人の兄弟のうち、ブルーローズを与えられた長男にあたる。


3つの材料が近づくことは、避けなければならないことのはずだった。


しかし、はちみつが目的だと気付かれることなくウェンディに取り入ることのできる青年など、国王はウィルフレッド以外には知らないのだ。


「こんなことを頼めるのは、お前しかいない」


まっすぐにウィルフレッドを見つめる国王の灰色の瞳が、いつまでも穏やかであるのを見て、ウィルフレッドはなんだか泣きたい気分になった。
< 41 / 293 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop