SweetS Time ~君は果実~
そのお店、デザートのクリームブリュレが最高に美味しかったの。
焦がしキャラメルの甘い香り、スプーンを入れたときの、パリッとした繊細な飴の薄い上部はほんのり温かで、その下の濃厚なカスタードは冷たくて、舌に乗せた瞬間溶け出して……。
そのとき、スイーツ好きの理子は至福のときを満喫していた。
そして目を開けたらふと視線を感じて、テーブルを挟んだ向こうから、たくさんのともだちに囲まれた一樹と目が合った。

「お前、すげーうまそう」

「……は?」

「……に食うのな」

それがきっかけで、一樹と交流が始まって。
気づいたら付き合っていた。


今もまた、スイーツを前に喜びを表す理子を一樹の眼差しが見つめていた。
テーブルに並んだスイーツの隙間に肘をついた一樹が、なんとも羨ましそうに頬を突っついてくる。

「だってこれ、ほんとうに美味しい! 千○屋のスイーツだって滅多に食べれるものじゃないのに、こんなにたくさんあるんだもん」

「理子がさ、喜ぶと思ってたくさん貰ってきたんだぞ」

「すっごく嬉しい!」

決して作り物ではない、心の底から自然とでる笑顔。
一口づつ味見しては至福の笑顔を浮かべる理子に、最初は一緒になって喜んでいた一樹は、いつしか喜べなくなっていた。
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