黒毛のアンと僕。
僕は法学部で、大河原さんは文学部。



学部は違うけど、同じキャンパスで、一年生のうちは一般教養の授業がかぶることもある。




そして、次の時間は、数少ない、大河原さんと同じ講義だ。




うまくいけば、大河原さんの近くに座れるかもしれない。





僕は一緒に昼食を食べた友人に手を振り、講義が行われる一号棟へと小走りで向かった。





12番教室に入ると、大河原さんの真っ赤なTシャツがすぐに目を引いた。





やった。



講義開始までにはまだ20分近くあるから、学生たちはほとんど来ていなくて、席はすかすかだ。





僕は何気ないふうを装って、大河原さんの斜め後ろの席に腰掛けた。





僕は鞄から教科書やノートを取り出しつつ、大河原さんを観察する。





いつものように、文庫本を読んでいた。






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