奥様のお仕事
鼻から入ってくる空気はもう冷気だった。


「寒いだろ?」


「はい 想像できなかったくらい寒いです」


「まだまだ 序の口だよ
鼻の穴もまつ毛も凍るんだよ」


「え?まさか」


浩一郎って冗談なのか本気なのか よくわからないタイプ
何歳なのかとか 何の仕事をしてるとか
何より 私はいったい どんな仕事をするのかも
何一つよくわかってないのだった。


スーツ姿の 浩一郎はすごく落ち着いていて
多分 三十代くらいに見える。


私よりはずっと大人なのは確かだけど


とりあえず安心できたのは 祖父が頼れと言ったからで
後は何一つ全然わからないことが多すぎる。


飛行機の中でもっと話をしたかったんだけど
爆睡しちゃったみたいだし


「さ 行こうか」


スーツケースを引っ張って颯爽と歩く後姿を
小走りで追いかける。


千歳はまたさらに たくさんの人がいた。
それこそ こんなとこで見失ったら シャレにならないから

もう少し気を使ってほしいんだけど・・・・・
心臓がバクバクする。
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