続*時を止めるキスを —Love is...—


確かにタカシと付き合ってた当時は、ずったずたに女としてのプライドを砕かれてきた。

20代も後半にさしかかり、もう彼氏からは女として見られなくなってしまったのかと。

だから、若い子相手に“自分のもの”だと言い張ることも出来なかった。ただ、我慢して耐えるしかないと思っていた。

盛大にフラレた後もひとりでいたら、こじらせ女子街道をひた走っていたと断言出来るくらいにはどん底を味わった。

でも、別れがあって今があると素直に感じるから。今日タカシと対面して怒りこそ沸いたけど、心は1ミリも揺さぶられなかった。

別れを乗り越えたと胸を張れるように、もう後ろを向いていたくない。——だって私は、龍のお陰で毎日が満たされているから。


「なんか食べてく?」と聞きながら、そっと引き離してくれる彼を見上げて笑う。

「じゃあ、……早く帰ろ?」と、色気ゼロの女もたまには目で語りますよ……?

食べたいもの?そんなのひとつに決まってる。——いまの私が欲しがってるのは龍だけだよ?、と。


言葉もしくは視線のどちらで察したのかは分からないけど。龍はメガネの奥の目を細め、微笑を浮かべている。

だから、今日は私のほうからその腕を取って、ギューッと離れないようにくっついて歩く。

愛情は与えてもらうばかりじゃだめ。たまにはこうやって表現してみると、相手の喜ぶ顔を拝めたりもするからこっちまで幸せになれる。



素直になるのは簡単なようで難しい。

ただ守ってもらいたいとは思わない。

依存するだけの関係は、もっといや。

お互いを大切に、高め合いたいから。

こんな私に自信をくれた貴方と共に。


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