むとうさん
しばらくすると、むとうさんは少し離れると、私の方へむいて頭をぽんぽんとした。

「仕事がんばれよ…あんたが設計した車、乗りたいんだからさ。」

むとうさんは低く優しくそう言った。私は、ありがとう、と伝えているように受け取った。

海は穏やかに波打って護岸を濡らしている。

満月は明日から欠けていくのを惜しむようにまん丸く夜を照らしていた。
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