イジワル副社長はウブな秘書を堪能したい
 このままホイホイついていけば、来年にはワシントンに連れて行かれるよ。

 かといって断れば、また兄が干渉してくるに違いない。

 お兄ちゃんと木村さんのタッグに勝てる気がしないよ。どうしよう〜!

「分が悪すぎる」

頭を抱えていたら、不意に瑠海が現れた。

「何が分が悪いのかな?」

 あちゃー、聞かれたか。

 まだ副社長室にいたんだよね。

「何でもないです」

咄嗟に笑顔を取り繕って誤魔化す。

「明日は来客があるし忙しくなるよ。もう暗いしモタモタしてないで早く帰った方が良い」

「……はい」

 う~ん、この人くらい駆け引き上手かったらなあ。

「俺の顔に何かついてる?」

 気がつかないうちにじっと見ていたらしい。

「あっ……すみません。何でもないです。気にしないで下さい」
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