薫子様、一大事でございます!

「これはいらない」


滝山と二人、揃って帽子を取られ。


「これもいらない」


続いてサングラス。


「こんなの着てて暑くないのかよ。ったく」


コートまで脱がされた私たち。


おかげで暑さからは解放されたけれど。


「いつもの格好でいいんだよ、いつもので」

「……そうなんですか?」

「そんなんじゃ、“私は怪しい者です”って看板背負ってるようなもんだ」


言われてみれば、そう……かな?


「通行人に紛れて尾行するんだぞ? ごく普通でいいんだ。これでよし、と」

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