薫子様、一大事でございます!
こんなに朝早くから大騒ぎするようなこと?
何度も言うようだけれど、滝山の“一大事”が本当に一大事なことは、滅多にないのだ。
「とにかく、事務所へ来てください」
私の手をむんずと掴んで引っ張る。
「ちょ、ちょっと滝山ったら!」
もつれる足に何とかサンダルを引っ掛け、力任せに私の手を引く滝山に続いた。
半開きになった事務所のドアから中へと入る。
するとそこには、北見さんがいたのだった。
こんな時間に北見さんまで。
一体何があったんだろう。
ぼんやりする頭は、まだ就寝中と変わらず。
何も考えられないまま、滝山と北見さんを見た。